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15642. 匿名 2023/11/01(水) 01:14:50
>>14666 ③観光バスドライバー🍃さんと添乗員がる子と、🍉くん率いる弟君たちのお話(⚠️解釈違い⚠️年齢設定等捏造あり⚠️会話の中だけ女性キャラの登場あり)(※今日は2話上げます。コメント下さるがる子さんありがとう✨)
バスは予定通り新宿を出発し、車内では時々お子さんたちがおしゃべりする声や、おやつを開けるような音が響いている。不死川さんの弟さんたちも、最後尾で横並びに座ってイヤホンをしたりゲームをしたりしているようだ。一方で…
ど…どうしよう、不死川さんの機嫌がすこぶる悪い…。
便宜上、添乗員はバスの1番前の席に座っているけれど、運転席から聞こえてくるため息や舌打ちの数が前回の比じゃない…。
1番最初のトイレ休憩であるSAに着いた瞬間、不死川さんは誰よりも早くバスから降りてさっさとどこかへ行ってしまった。
弟さんたちとトイレに行こうと降りてきた玄弥さんを捕まえて、コソコソ聞いてみる。
「あのっ玄弥さん…お客様にこんなことお尋ねするのは大変心苦しいのですが…これは決して公私混同ではなく危険運転を防止するためであってお客様の安全のためだから、そうだよね、大事な業務上の必要任務として堂々としてればいいのかな…(ブツブツ)」
「えっ?なんですか?」
「えっあっすみません、不死川さ…実弥さんが少し所在無さげというか、えーっと落ち着かない様子というか…」
「あ〜、兄貴照れ屋だから」
「て…照れ屋ですか?」
「はい、仕事してる姿を弟達に見られんのがバツが悪ぃんだろーな。俺らはああいう反応の兄貴は想定内で参加してるんすけどねwそれにもしかして…」
じ…っと玄弥さんに見下ろされて不安が募る。
「がる山さんって、下の名前ってがる子さんですか?」
「は、はい…」
「俺はちょっと兄貴の気持ちもわかるような気もします。じゃっ」
ペコっと頭を下げて玄弥さんが弟さんたちと合流したのを見届けて、私は頭を抱える。玄弥さんたちは見慣れてるかもしれないけど、不死川さんが運転に集中できない状況なのは大問題だ。
こんなときに思い付くのが、結局のところ甘いものを差し入れるくらいしかない自分が不甲斐ない。
近くにあった自販機で温かいお汁粉缶を見つけたので運転席に置いておいたけど、時間ギリギリに戻ってきた不死川さんからは特になんの反応もなく、缶を開けてもらえた気配はなかった…。
それでも、休憩前よりは落ち着いた様子の運転にホッと胸を撫で下ろしながら、無事お昼処に到着することができた。
グループごとにお客様にテーブルに座っていただき、全員にほうとう鍋が行き渡ったことを確認してお昼ご飯開始。
他のツアーのときにもそうしているように、テーブルひとつひとつに声をかけて何か不足がないかお聞きしてまわる。ほうとう鍋はかぼちゃ等と煮込んだうどんのような料理なのでお子様にも食べやすく、その点もこのコースがファミリー層に人気の理由のひとつ。
最後に玄弥さん達のテーブルに伺うと、熱々のほうとうを4人でフーフーしながら美味しそうに召し上がってくれていた。
「お味はどうですか?」
声をかけると「うまい!」「麺が平べったくてもちもち!」「ホッとする味だなぁ」と好評のよう。
「兄ちゃんも同じもの食べてるの?一緒に食べられないの?」
当然来るだろうなと思っていた質問を、こと君がしてくれた。
「実弥さんも同じお鍋ですよ。私たちは従業員部屋でいただくんです。でももしよかったらお呼びできるので呼んで来ましょうか?」
「え〜いいでしょ別に。いつも家で一緒に飯食ってるんだから」と就也さん。
「こと、兄貴は今日仕事で来てるからな。さっきまで運転して疲れてるだろうからさっさと食って昼寝してるかもしれねぇし、俺たちがいるからいいだろ。ここが気に入ったんならまた母ちゃん達連れてみんなで来ような」
玄弥さんがそう言うと、こと君も納得したようにまたほうとうをすすり始めた。
「がる山さん、俺たち大丈夫なんで、がる山さんもお昼食べてきてください」
玄弥さんしっかりしてるなぁ、不死川さんとはまた違った頼もしさで素敵だなぁと感心しながら従業員部屋に向かうと、玄弥さんの予想通り、すでに空になった鍋を横にずらして、不死川さんがテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。
(つづく)+23
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15644. 匿名 2023/11/01(水) 01:24:24
>>15642 ④観光バスドライバー🍃さんと添乗員がる子と、🍉くん率いる弟君たちのお話(⚠️解釈違い⚠️年齢設定等捏造あり⚠️会話の中だけ女性キャラの登場あり)
起こしてしまうのではと迷ったけど、不死川さんの向かい席に私の分のお昼が置かれてあったので、そーっと席に座って静かに食べ始めた。
朝に言葉を交わして以降、一度も不死川さんと話せていない。
知らないこととはいえ、うちの会社が弟さんたちの参加を引き受けちゃったから気疲れさせちゃったんだよな…、お汁粉もあんまり好きじゃなかったかな…。
昨夜の浮かれ気分はすっかり吹き飛んでしまって気持ちが沈みそうになるけど、まだこのツアーのメインの果物狩りはこの後だ!しっかりしなくちゃ!
「あァ…なんだ起こしてくれりゃあよかったのに…」
少しして不死川さんが目を覚ました。思ったより普通に話しかけてくれて、気が楽になる。
「すみません…気が散りますよね…」
「あ?」
「仕事場に急に身内が来るとなると…」
「あー、正直クソやりづれェ」
あくび混じりに怒気を含んだ不死川さんの言葉に、思わず「…ですよね…すみません…」と声が小さくなる。
「なんで謝る?がる山さんは悪くねェだろうが」
「…でもウチの会社が参加者受け付けちゃったわけですし…」
「それを言ったらインフルになった粂野が元凶だわなァ。いやでもそのおかげでこうして会えたんだからむしろ感謝するところか?」
笑うべきなのか照れるべきなのかわからず、微妙な笑みを浮かべてしまう。
「前回も思ったが、がる山さんアンタ、変な謝り癖があるな…前職何だったんだァ?」
「…公務員です、役所の窓口…」
ナルホドと聴こえてきそうな顔を不死川さんがする。
「そりゃまた大分異業種からの転職だな。理由聞いてもいいか?」
「うち、元々は母がずっとこの添乗員…ツアーコンダクターやってたんです。うちは幼い頃に父が亡くなって母子家庭で。母が仕事で国内外飛び回らなきゃいけないので、私達兄弟は祖母が育ててくれたようなものでした。でもやっぱり母がほとんどいない生活はすごく寂しくて…。自分は逆に、地域に根付いた仕事がしたいと思って公務員を目指しました」
「なるほどなァ」
「でもいざ働いてみると以前は理解できなかった母の苦労や有難みがわかってきて…。何より私自身が、寂しさ以上に、やり甲斐をもってツアコンの仕事をする母の姿に憧れを抱いていたことに気付いたんです。自覚するのが遅いんですけどね」
「それで転職かァ」
「はい。それで私もすぐ海外添乗の資格も取って経験を重ねられたら、そのうち独立してスタッフが結婚・出産・仕事を無理なく両立できるツアコン事務所を立ち上げるのが夢なんです。まぁ、まだまだ駆け出しのヒヨッコが何言ってるんだって感じなんですけど…」
私が話す間中、不死川さんは茶化すこともせずこちらを真っ直ぐ見つめながらじっと腕組みして聞いてくれた。
「すげェながる山さん…」
「…え?」
「いや、俺達も働き方としては同じようなもんだからよォ。家庭のある先輩がそっちの時間を当たり前みてェに犠牲にする姿を沢山見てきたからなァ…ウチもなんとかならねぇモンかな。ん〜…」
「・・・嬉しいです」
「あァ?」
「あっすみま…じゃなかった、ありがとうございます、そんな風に言ってくださって。新人が何偉そうなこと言ってるんだって思われたらどうしようって思ってました」
「誰だって初めは新人だろォ。目標があってカッコいいじゃねえか」
格好いい人にカッコいいと言われると、素直にとても嬉しい。
「すぐに手の届かないところに行っちまいそうだなァ…」
「え?」
「いや何でもねェ。ところでがる山さん、いいのか?そろそろ集合時間だぜ。俺はひと足先に戻ってるわァ」
何だろう…少し近寄れたかと思ったのにまた距離ができてしまったような心細さを感じながら、私は残りのほうとうをかき込んで腰を上げた。
(つづく)+21
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