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15560. 匿名 2023/10/31(火) 23:27:14
>>15503
三日月の初恋🌙 六話
⚠🐚
ある夜──
私は震える手でそっとその白い頬に手を伸ばしてしまった
そしてゆっくりと屈み込んでその唇を求めた
吐息を肌に感じたその瞬間
月彦さんは目を開けると私を突き飛ばして身を離した
──ああ!
私ったらなんてことを…!
「ごっ…ごめんなさい!
わ、私…私…」
必死に謝ろうとするが言葉が繋げない
月彦さんの表情はよく覚えていない
ただ襖の閉まる音と階段を駆け降りて行く足音だけが耳に残っている
その夜を最後に私の元に月彦さんが来ることはなくなった
私は堪え切れなかった…!
もう取り返しはつかない
もう月彦さんは来ない
もうこの膝にも──
あのお方を感じることも
あの美しいお顔を見つめることも
もうかなわないのだ──
「何だ?泣いてるのか?
泣くほど良いのか?へへへ」
下衆い男!汚い!醜い!
こんな男たちに散々抱かれて汚れた私など
あのお方は唇が触れることすら嫌だったのだろう──!
私は客に馬乗りになった
「おいおい!今夜は随分激しいじゃねえか」
客の言葉など聞いてはいない
私は狂ったように腰をくねらせた
もっと!もっと!もっと!
毎晩毎晩──
けれどそんな行為は虚しいだけだった
客はたいそう喜んだし
さらに私を指名する者は増え
店は儲かり皆が喜んだ
だが──
男たちの欲望に
削りに削られ続けた月は+24
-10
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15587. 匿名 2023/10/31(火) 23:46:33
>>15560
切れました!すみません💦
もう七話に繋ぎます
三日月の初恋🌙 七話
⚠🐚
男たちの欲望に
夜毎削りに削られた月は
細く細くなっていく
極限まで細くなった三日月は
ある夜ついに
ポキリと折れた──
あれから三月…
私はもうあの店にいない
でもそんなことをあのお方は知る由もない
だってもう二度と私を指名することなどないだろうから
そもそも誰でも良かったのだろう
今頃は他の遊女の膝枕で眠っているのかもしれない
…フフッ
私は惨めな姿を自嘲する
ゴフッと咳き込むと掌が赤い血で染まる
いつかこうなることはわかっていた
よくあることだ
遊女は病気になればもう用無しだ
華やかな店からは離され
切り店へと追いやられる
あとは死を待つだけの──
ああ、今夜も細い三日月だ
心はとっくに泣き尽くしてカラカラに干からびている
もうなんにも感じない…
血で汚れた掌を洗いに行かねばと
ヨロヨロと玄関先の水場へ壁を伝いながらたどり着く
──ガタン!
膝が折れて倒れる!と思ったその瞬間
私の体は抱き止められた
つづく
+28
-8
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