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15269. 匿名 2023/10/31(火) 19:58:05
>>15267
⚠解釈違い⚠ピュア⚠長文
【橙色の奇跡を君に】第2話
彼女に引っ張られるまま、お花畑探しは続いた。と言うよりも彼女の行きたいところに連れて行かれたという方が正解だろう。電車に揺られ車窓から入る潮風を目一杯吸い込む。流木に腰掛け、彼女は集めた貝殻を私の掌に乗せた。立ち寄った喫茶店、カフェラテの温かさが身にしみる。彼女が纏う柔らかな空気感に安らぎを覚え、聞こえる無邪気な笑い声に心が温かくなった。こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。だが私は少しずつ彼女に疑問を抱くようになった。まずは電車内での事だ。私に座席を譲った男性は「お一人で大変でしょう。」と声をかけてきた。『お一人』いや彼女が傍にいたはずだ。身体を温めようと入った喫茶店では『お一人様』と案内された。周りの者には彼女が見えていない。彼女はいったい何者なんだ…
陽がだいぶ傾いたのだろう、冷たい空気が私の頬を撫でていった。
「君の探しているお花畑は見つかったのか?もう日が暮れる。秋の日はつるべ落としだ。あっという間に暗くなる」
「まだ。でもね、もうすぐ見つかると思う。もう一人で探すね」
「お花畑を見つけたら、もう戻って来ないのか?」
「うん、たぶん」
私たちを重く冷たい空気が覆った。
「本当はまだ行きたくないのだろ?黄泉の国へ」
空気が揺らいだ。
続きます
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15272. 匿名 2023/10/31(火) 20:02:10
>>15269
⚠解釈違い⚠ピュア⚠長文
【橙色の奇跡を君に】第3話
「悲鳴嶼さん、気づいていたんだ。」
「ああ。私は目が見えない分、他の人よりも感覚が鋭い。君が私だけが感じる何者かだとは気づいていた。」「そっか。私ね、もうすぐ命の火が消えるの。お爺ちゃんが待つお花畑に向かう途中に橙色の世界があまりにもキラキラしていて寄り道したの。今日はハロウィンなんだね。それが道に迷っちゃって誰に声をかけても私を通り抜けていくし、悲鳴嶼さんだけが気づいてくれた。本当はね、この世から消える前に恋をしたかったんだ。もう何年だろ、ずっと病院のベッドの上にいたから、恋も何も知らない。だからデートの真似事しちゃった。今日はすごく楽しかったぁ!悲鳴嶼さんとずっとずっといられたらよかったのに。でもね、もう疲れちゃった。そろそろゆっくり眠りたい」
「君はそれでいいのか?」
「だって、ここは私の住む世界じゃないもの」
「君はまだ生きているだろ。手も心も温かいではないか。生きて、愛する人にめぐり逢って、一緒に季節を感じ、幸せを感じなさい、諦めるのはやめなさい」
「悲鳴嶼さん、何だか先生みたい」悲しみに覆われた空気がその一瞬だけ温かくなった。彼女が笑ったようだ。
「私は教師だ」
「そうなんだ。でも奇跡が起きない限り無理だよ。もし生まれ変わったら悲鳴嶼さんみたいな人に逢いたいな。」
私の唇が温かくなった。
続きます
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