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15109. 匿名 2023/10/31(火) 06:46:00
>>15107
三日月の初恋 三話
いや、「食事は済ませたから」
「酒は飲めないから」という客はまあいるし
中には男女の営みを求めてこない客もいるにはいた
そういう場合は内心ほっとしたし楽なので良いのだが
この男は何かがそういう客とは違うように感じた
月を見るその横顔は美しく
見惚れるほどの色男ではあるのだが
──何だろう?
ぼんやり見つめていると
ふと男が私を見た
目が合った瞬間、私の胸がドキンと鳴った
男は私を見据えたままにじり寄ると
おもむろに私の膝に頭を乗せた
「──このままでいさせてくれないか」
瞼を閉じて男は言う
「ただ、少しだけでいいんだ──」
男は疲れている様子だった
ネクタイを軽く緩めボタンを2つ外した
その仕草とちらりとのぞいた胸元にまたドキリとする
私の心臓の音は聞こえていないだろうが
私は柄にもなく緊張していた
膝枕をねだる客などいくらでもいるのに
なぜだろう?
この男にはドキドキと胸が高鳴る
つづく
+35
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15110. 匿名 2023/10/31(火) 06:51:06
>>15109
ふと浮かんできて寝る前にここまで書いたのですが
いつも見切り発車なので思いの外長くなってしまったりもしますが
よろしければお読み下さい
今回は多忙でもあり一つしかお話を書けなかったなあと残念に思っていましたが
もう一つ書けそうなので良かったです☺
+33
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15438. 匿名 2023/10/31(火) 22:10:21
>>15109
三日月の初恋🌙 四話
「あの…お名前を…
何と…お呼びすれば?」
このような態勢で今更ではあったが
私はおずおずと尋ねた
男は「月彦」と名乗った
「え?月彦…さん?」
私は思わず笑ってしまった
「私の名はガル月──って
ここに来た時に選ばれたのだから
ご存知…よね?」
男はふんと素知らぬ顔で澄まして窓の月に目をやった
私は途端に親近感を持った
「月彦さんと…ガル月…」
同じ月を名前に持ち
こうして同じ月を見上げている
何だか可笑しいような不思議なような──
でも、それは私だけが勝手にそう感じているのかもしれないし
どうやら女を抱きたくて来たわけではなさそうだから
数多の女からたまたま自分と同じ月が付いた名前の私を選んだ
そんな気紛れだったのだろう
月彦さんはそのあと瞼を閉じると黙り込んでしまった
──眠ってしまった?
そっと髪を撫でてみるが反応はなかった
クルクルと畝るその髪を指ですうっと梳いてみる
月を見上げていると子供の頃を思い出した
曾祖母がよくこうして私の髪を撫でながら唄を唄ってくれたなあ、と
それは古い古い昔の唄だと言っていた
何だっけ?あの唄──
ああ、そうだ──
私は小さな声で唄いながら
優しく優しく月彦さんの髪を梳いた──
つづく
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