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14134. 匿名 2023/10/29(日) 22:19:10
>>13522
⚠️解釈違い🐍 ⚠️己の趣味に全振り ⚠️🐚苦手な方は高速スクロール推奨❗️ ⚠️長丁場 ⚠️何でも許せる方向け
『初恋の君を想う時』六十三話
年が明け、少し遅い初詣でを済ませたくらいの短すぎる正月をガル子と過ごし、今夜も任務へと向かう。ガル子は既に指令を受けて、別の場所へと出発していた。鬼殺隊には盆も正月もあったものではない。鬼がこの世に存在する限り、俺たちの日常はこんなものだ。
今回の任務は数日かかるだろう。帰宅がいつになるかは分からない。ガル子にまた暫く会えないと思うと、胸が締め付けられるようだった。出来ることと言えば、こまめに文を飛ばすくらいだ。彼女に会えないもどかしさだけが募っていった。早く君に会いたい───。凍て付くような闇夜の中で、今夜も鬼の頸を斬った。
任務が片付き屋敷に着いたのは、出発から四日目のいつもより少し早いまだ暗い時間だった。隠によると、ガル子は非番で自室に居るという。風呂で身を清めてからガル子の部屋へと向かう。念のために部屋の前で声をかけてみたものの、返答は無い。まだ寝ている時間なのだから当然と言えば当然か。そっと襖を開けると、室内は暗く静まり返っていた。
彼女の寝顔を見てから、そして願鉄殿に教わったとある方法を実行してから自室へ行こうと、音を立てないように部屋へと入る。傍に腰を下ろすと、規則正しい小さな寝息が聞こえる。ガル子は自らの身体を抱くようにして、身体を丸めて眠っている。───微かに水の呼吸独特のあの音がする。常中が出来るようになったようで、安心した。
───まずはこれだ。起こさないよう注意を払い、ガル子の指に紐を一巻きした。月明かりのみを頼りに、目を凝らして紐が重なった所に印を付ける。───これでいいだろうか。窓辺に寄り、印がしっかり付いていることを確認し、ほっと息を吐く。その印の上をなぞり、更に濃く紐に刻んだ。念の為もう一度指に紐を巻き、印が問題の無い位置に付いていることを確認し、袂に仕舞う。仕上がりはいつになるだろうか。彼女に渡す日のことを思い、不安と期待が綯い交ぜになる。
顔にかかるガル子の髪をそっとすくい、頬を撫でて口付けをした。小さく喉の奥で呻き、ガル子が身じろぎした。瞼がぴくりと動き、薄らと目を開ける。
「すまない。起こしてしまった」「ううん───ごめん、夕庵の声、聞こえなくて───」目を擦り、身を起こそうとする彼女を制した。
「まだ寝ててくれ」「ん……」寝ぼけ眼の君を敷布に押し付ける。
「───ん」眠そうな眼で、君が俺に向かって両手を広げる。ちょいちょいと指を動かして誘うので、その手に自分の手を重ねた。
「え?───ぅわ」手を掴まれ、布団の中に引き摺り込まれる。君の胸元に突っ伏すと、肩に腕が絡み付いてきた。
「おかえりなさい」「あぁ───ただいま」頭からばさりと布団を掛けられた。
「一緒に寝る」温かい手が俺の頭をぎゅっと包んだ。
「石鹸の良い匂いがする」髪に鼻先をうずめて、君が大きく息を吸い込む。
身体をずらし、腕枕をしてもらう形で君の首元に擦り寄った。「重くない?」「うん、大丈夫」鏑丸が枕元でとぐろを巻く。頬を撫でられ、柔らかな唇が押しつけられる。
「おやすみなさい」「おやすみ」彼女の首筋に口付けし、軽く歯を立て吸い付いた。小さく甘い声を漏らし、君が身を捩る。
「…また跡付けた?」「あぁ。前に付けたのが消えかかってた」「ふふっ」くすくす笑い合って、唇を合わせてから腕枕の中に戻る。
目を閉じると、君の指が髪を撫でた。
身体の熱を分け合って、二つの鼓動が重なり合うのを感じているうちに、瞼が重くなる。髪を撫でていた君の手から力が抜けて、小さな寝息が聞こえてきた。
「───おやすみ」君の耳元でもう一度囁いて、自分も心地良い眠りへと落ちていった。
(つづく)+30
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14184. 匿名 2023/10/29(日) 22:56:47
>>14134
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『初恋の君を想う時』六十四話
梅の花が咲く頃に、私の階級はまた二つ上がった。
「君をそろそろ継子にと思うのだが」「いいんですか?」「あぁ、受ける気はあるか?」「はい」「ならば今日から君は俺の継子だ。心して任務にあたれ。お館様にはその旨伝えておく」「はい、ありがとうございます」
ところでこの場合、伊黒さんをどう呼べばいいのだろうか───師範?師匠?伊黒さんに訊くと「君の好きなように呼べば良い」と言うので、これまで通りに伊黒さんと呼ぶことにする。場面によって呼び方を変えると、咄嗟の時にボロが出そうで不安だったからだ。これまでと同じでいられることにほっと胸を撫で下ろした。
「今夜は任務だろう?」「はい。伊黒さんは?」「俺は非番だ。明日からは俺に同行しての任務に変わるからそのつもりで」「はい。じゃあ行って来ます」「行ってらっしゃい」冷んやりした手が伸びて来て、頬を撫でて唇を合わせた。
その翌日から、伊黒さんに同行しての任務が始まった。出立の時のことを考える。これもどうしたらいいのだろう。これまでは玄関で待ち、見送りをしていたけど───また伊黒さんに訊くと、「一緒に出れば良い」と言う。その時のことを想像すると、なんだか全然しっくりこなかった。
支度をして日輪刀を背負い、伊黒さんの部屋へと向かう。「伊黒さん───あの、お時間です」「あぁ、今行く」部屋から出て来た伊黒さんの後ろに付いて、共に玄関へと向かった。なんだろう───物凄く身分違いな気がする。物凄く、落ち着かない───。
玄関に着くと、隠さん達が出迎えた。草履を履き、伊黒さんが腰を上げるといつもの様に隠さんの声が響く。
「ご武運を、蛇柱様」その場の隠さん達が頭を垂れたのにつられて、私も頭を垂れる。顔を上げると笑いを堪えた伊黒さんが此方を向いていた。
「今から君も出かけるのだろう?」「そうなんですけど…」「慣れろ」「…はい」「顔を上げて」「はい!」異色の双眸に静かに睨まれ、一瞬にして気が引き締まる。そうだ、私はこの人の継子になったんだ。ぐだぐだ言ってる場合じゃない───自分がしっかりしなければ、伊黒さんが恥をかく。
「すみません」顔をぐいっと上げ、前を見た。「それで良い」「はい」踵を返して玄関を出る伊黒さんに続き、外で待つ隊士達と合流した。
「君は俺が選んだ継子だ。自信を持て」「はい」前を向いたまま、伊黒さんが私に言った。「堂々としていれば良い」ちらりと此方に視線を投げかけ、前を向くと進める足を早めた。
「───はい」合わせて私も脚を早める。
前を行く縞の羽織りを追いかけて、深くなる夜の闇へと更に進む。
初めて伊黒さんと共に鬼を狩る。ふと目を向けたその先に、波打つ日輪刀が双頭の大蛇が絡み合うような閃光を放った。凍て付くような月明かりを浴びて、縞の羽織りがふわりと翻る。この夜見た伊黒さんの姿を、私は生涯忘れることは無いだろう。闇夜に舞ったその姿は、この世のものとは思えぬ程に妖艶だった。
(つづく)+33
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