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                1254. 匿名 2023/10/08(日) 10:10:59 >>972初恋🍃(前編)
 ⚠解釈違い
 
 カタカタとキーボードを叩く無機質な音が、静かな室内に響く。空腹を抑え、ため息を堪え、1人、また1人と減っていく同僚を見送った。
 
 (…疲れた…)
 生徒に配布予定の文書を、昨夜やっと仕上げてデータをUSBに保存していた…のだが。
 さぁ印刷しようとデスクを探ったところ、USBが見当たらない。朝、デスクの上に置いた記憶はあるのだが、どこを探しても無い。仕方なく、記憶を頼りに新たに作り直す事にしたのだ。
 
 「おーガル山お疲れェ、まだ終わんねぇのかァ?」
 そう言って職員室に入って来たのは、数学の不死川先生。
 「もう少しで終わりますよ、あとは印刷です」
 「手伝ってやるよ。今日何か予定あったんじゃねぇのかァ?」
 「え!ありがとうございます!予定はえっと…いえ、特に無いです!」
 
 …と言うのは嘘で、本当は「合コン」の予定だった。
 キメツ学園に赴任して4ヶ月。漸く新しい環境に慣れてきた、人一倍不器用で人見知りの私に、友人が「そろそろ恋でもしなさい」と誘ってくれたのだ。
 
 はぁ、とため息を一つ落とすと、「ホレ」と不死川先生の声と共に、横からカフェオレが現れた。私がよく校内の自販機で買っている、ミルクたっぷりの甘いカフェオレ。
 「糖分とってもうひと頑張り、な?」
 「はい!頂きます!」
 受け取ると、不死川先生は缶コーヒーのプルタブをぱき、と開けた。捲りあげた袖から覗く前腕に、筋肉が収縮して隆起するのが見えた。
 (随分逞しくなったなぁ…)
 
 温かいカフェオレを胃に流し込むと、廊下から談笑する声と足音が近付いて来た。この声は…
 
 「やべェ、隠れろガル山」
 
 続く+35 -9 
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                1258. 匿名 2023/10/08(日) 10:14:50 >>1254初恋🍃(後編)
 ⚠解釈違い
 
 「やべェ、隠れろガル山」
 「へ?なんで?」
 「いいから!」
 グイッと手を引かれ、デスクの下に2人で潜り込んだ。不死川先生の右腕は私をすっぽり包むように背中に回され、極狭の空間で、私達の体は薄いシャツだけを間に挟んで密着している。
 まるで少女漫画みたいなシチュエーション。耳元を掠める不死川先生の吐息のせいで、心臓が駆け足を始める。
 
 「おーい不死川ー、メシ食い行くぞー」
 美術の宇髄先生の声だ。
 
 息を潜め、不死川先生に目配せをして、なんで?と口パクで訴える。不死川先生は、「しー」と人差し指を口元に当てて、左の口角を上げて笑った。そして私の耳元で、
 「…懐かしいなァ、ガル子」
 
 ────あぁ、覚えていてくれたんだ。
 
 私達は、小学生の時のほんの数ヶ月間、同じ団地に住んでいた。親同士が親しくなった縁で、彼の幼い弟達と、彼らの部屋でよくかくれんぼをして遊んだ。
 「いーち、にーい…」と弟が10数える間に、私が潜り込んだ押し入れには、先客がいた。
 体を小さく丸めた彼は、「しー」と白い歯を見せて笑って、2人で体をくっつけて息を潜めて隠れていた。見つけられなかった弟がとうとう泣き出して、2人で慌てて飛び出して宥めたのを覚えている。
 
 「宇髄!不死川はいたか?」
 「…あー、そういやアイツ今日デートだって言ってたの忘れてたわ。今頃彼女とよろしくやってんじゃねぇの?」
 
 小さくなっていく同僚達の声に、不死川先生が隣で「チッ」と小さく舌打ちをした。
 「デートなんですか?」
 「違ぇわ。宇髄の奴気付いてやがったな。あの地獄耳野郎」
 漸くデスク下から出ようと不死川先生が体勢を変えた時、ポケットから何かがポトリと落ちた。
 「あー!これ私のUSB!なんでサネちゃんが持ってるの?!」
 
 驚きの余り、昔の呼び名が出てしまった。「サネちゃん」は眉尻を下げて、困ったように笑った。
 「…初恋の相手が、綺麗になって目の前に現れたんだから仕方ねぇだろ。合コンなんか行かせてたまるか」
 
 …何故合コンの事を知っていたのかは置いといて…
 「私に残業させた罪は重いよ?サネちゃん」
 「何をして償いましょうかお姫様ァ」
 
 静まり返った職員室のデスク下。
 私達は額を寄せ合い声を潜めて、かくれんぼと初恋の続きを始めた。
 「好き」
 「俺はもっと好き」
 
 誰にも見つからないように、そっと唇を重ねた私達を、雲間から顔を出した満月が見下ろしていた。
 
 おわり
 +43 -11 
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                16748. 匿名 2023/11/03(金) 09:08:18 >>15655
 まとめ置き場の提供感謝致します
 
 全て🍃です
 【お題回答】
 >>1127長期任務帰りの推し(SS)
 >>1161紹介します
 >>1254初恋(全2話)
 >>1336態度悪いレストラン
 >>1993帰りたくない(SS)
 >>3203キス待ち顔
 >>4712夜食を阻止
 >>5738勘違い(全2話)
 レス先間違えてました😱4077様申し訳ありませんでした💦
 >>6063迎えに来た彼氏
 >>7964第三者目線🌙🥐(SS)
 >>9672約束の木🌳(全4話)
 >>10230友達以上恋人未満(SS)
 >>13668雨宿り☔(全4話)
 >>15826オフィスラブ
 >>16061sora(SS)
 
 【長文】
 >>2758世話焼き柱のオカン川(全6話)
 >>5388明か時を待つ(全2話)
 
 【Part13のまとめ】
 
 主な過去作は、外科医不死川実弥、不死家洋菓子店です
 
 今回「初恋」のお題を出させて頂きました。初恋ってなんでこんなに刺さるんでしょうか。檸檬みたいに酸っぱかったり、ブラックコーヒーみたいに苦かったり、お砂糖みたいに甘かったり…過去の初恋の味が、その後のちょっとしたきっかけで変わったりもするんですよね。どのお話も素敵でした✨お題出して良かった。ありがとうございました!(最後の恋も書いてみたかったァ!お題主様ありがとう!)
 
 今回はこれまでで1番妄想と向き合う時間や脳味噌の余裕がなくて枯渇気味で、Part13まで頑張ってきた連載型の長文は控えましたが、最後不思議とラストスパート気味にあれこれ書けて良かったです。
 今回はROMガヤかな!と思っていたのが、気が付けばそこそこ書いていた…彼トピマジック恐るべし!やっぱりここが好きで、合間に覗いては、笑ったり癒されたりしています。
 なんだかんだ同じお茶っ葉を使い続けて味も旨みも出なくなった薄味のお茶みたいな話ばっかり書いてる気が…^^; そんなものでも読んで頂いてプラスポチして頂いてコメントまで頂けて、心から感謝です💐
 
 柱稽古編📺では同担さんと一緒に墓に入る約束もしたし(一方的に💦)、天元様のお誕生日にはお嫁さん達とお話出来て(返信頂いたのに返せなくてごめんなさい!でも嬉しかった♡)Part14も楽しかったです!
 また会う日まで、皆さまお元気で💙❤️💛💜💚🧡
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