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15003. 匿名 2023/01/03(火) 10:48:59
>>15002
続きです。長くてすみません🙇♂️
河﨑:エキノコックスは人間に寄生しても親虫になれず、卵を産めないですよね。
そうした、寄生虫にとっても望ましくないエラーというのは結構あるものなんですか。
八木:クジラの回虫のアニサキスなんかもそうですよ。
河﨑:ああ、あれは寄生されるとものすごく痛いといいますね。
八木:そう。魚にアニサキスの幼虫が寄生し、その魚をクジラが食べると消化管の中で親虫となって卵を産む。
でも、寄生された魚をクジラではなく人間が食べると、「ここ違うな」と思うのか、胃壁に潜り込んで幼虫のままでいようとするんですね。
で、そのまま死んじゃう。
そのような偶発的な感染は、強い病原性を発揮することが多いようです。
小説の中でも、エキノコックスが人間の脳に寄生したケースが出てきますよね。
河﨑:あれは、根室のほうの郷土資料館の方からお話をうかがいました。
八木:好適宿主、つまり望ましい宿主であるネズミなんかは必ず肝臓か、隣接した場所にしか寄生されないんです。
でも人の場合、脳や骨に寄生されることがある。
アニサキスと同じように人が好適宿主でないことが原因なのかもしれません。
ただ、寄生虫が非好適宿主、つまり望ましくない宿主に寄生するのは、もしかすると新しい宿主を獲得するチャンスを狙っている個体がいるのかもしれません。
歴史の中で、寄生虫が宿主をスイッチするってことはありましたから。
河﨑:それは進化といっていいんでしょうか。
八木:難しいですね。謎が多いんです。
でもそここそが、エキノコックスのポイントだと僕は考えています。
ウイルスや寄生虫は悪いものだから根絶しなければならない、と考えておられる方もたくさんいますが、僕は基本的に、共存していくしかないという考え方なんです。
共存しながら感染をどう防ぐかを組み立てるのが自分の仕事だと思っています。
小説の主人公・土橋もそういう視点を持っていて、共感する部分がありました。
河﨑:共存していくなかで、今後、人間は何ができるでしょうか。
八木:大きく分けてふたつあります。
ひとつは人側の治療薬。治療薬が開発できれば、それほど恐れなくてすみます。
もうひとつは、人への感染がどのような状況で成立するのか、そのメカニズムを明らかにする研究ですね。
今のコロナウィルスも同じです。
感染のメカニズムがわかれば、感染を回避する有効な方法が見つかるものと考えています。
河﨑:日常生活において、手洗いなどの他に気を付けたほうがいいことはありますか。
八木:飼い犬は人とのコンタクトが多いですから、僕は犬のリスクについてはもう少し気をつける必要があると思っていますね。
河﨑:春の狂犬病ワクチンみたいな形で、定期的に予防接種ができると、だいぶリスクは減りますか。
八木:まさにその通りで、作中にも出てくるプラジカンテルという薬を実験的に犬に30日ごとに薬を飲ませると、感染はほとんどゼロなんですね。
エキノコックスが寄生してから卵を産むくらい成長するまでに30日くらいかかるので。
いわゆるフィラリアの薬もひと月に1回投与するので、その時一緒に薬を飲ませるように指導している獣医さんもいます。![]()
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