ガールズちゃんねる
  • 105. 匿名 2015/01/01(木) 18:08:11 

    「あぁ…。怖かった…。」
    運転で疲れた肩をさすりながら部屋に入る。
    「ただいまー」と言ったところで返事などあるはずもない、一人暮らしの部屋。
    疲れを癒すため、紅茶を入れる。

    高速道路はほとんど渋滞はなく、スムーズに流れていたが、3台先の車が薄っすらしか見えない程の突然の雪に恐れ慄いた。

    それは、私が幼い頃の話。
    家族で車に乗って旅行に出かけた。
    まだ雪が残るカーブの多い山道。
    窓の外を見る幼い私は木に積もる雪がクリスマスケーキのサンタの家のようで、こころを弾ませていた。

    「あそこのカーブ、なんか怖いな…」
    父の言葉に、前方に目をやるとカーブの真ん中あたりでガードレールが一箇所だけ取れて無くなっている場所があった。
    父は細心の注意を払い、カーブに差し掛かった…。
    その時…。
    車はゆっくりとガードレールが無い場所に滑り近づいていくではないか!

    「とうさん!」兄の叫びに父は「わかってる!」と焦りを浮かべた。
    私は運転席の後ろから父に抱きつき「怖いー!」と叫んだ。

    その時間は、ほんの数秒だったのだろうが私達には長く、長く、感じた…。

    幸い、崖にギリギリまで近付いた所で車は止まった。

    「大丈夫だ。皆んな、動かず、静かに…。そっと走り出せば大丈夫だから…。」と父は言い、車を走らせた。
    車は無事に走り出し、待避所でチェーンを装着する事にした。

    「無事で良かった…。」
    待避所に着いて車を降りた兄と私を父は、同時に抱きしめ泣いた。
    そんな父を見て、兄も私も一緒に泣いた…。

    「ふぁ〜…。やっぱり外の空気はおいしいわ〜。ところで、皆んな…。何かあったの?」
    あの、恐怖に包まれた車内で一人、イビキをかき眠っていた母であった…。

    「雪は本当に怖い…。」
    揺らぐ紅茶の湯気を見ながら昔を思い出すのであった…。

    「あ!そうだ!新しいアパートの新築祝いは何が良いかしら…。うふふ」
    雪の恐怖はもう、消え去ったようである…。

    +7

    -0