黒子が多い人
151コメント2017/07/01(土) 20:12
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97. 匿名 2017/06/11(日) 15:58:19
「稲川、おかしいよ…」
「何が?」
「黒子さんの衣装を着た出演者は何人居る?」
「えーと、そうだなあ。少女人形3人、少年人形3人、それと舞台監督さんだから全部で7人だろ?」
「…8人居るんだ」
「…ウソつけ!」
舞台の背面にある壁には、ホリゾントという幕が天井から舞台の床まで垂れ下がっている。その幕に色々な光を当てたり影を投影させたり、特殊効果を与えて演出して行くのだが、そのホリゾントと壁の間のわずかな隙間に人が立っているというのだ。
「…お前それ誰かに言ったか?」
「いや、言ってないよ」
「言うんじゃないよ?…皆気にするからさ」
とは言ったものの稲川さん自身も気になって当たり前である。目は自然とその「誰かが立っている辺り」を見てしまう。すると、小さな明かりが2つ見えた。
(あぁ、なんだ。舞台監督さんか。メガネに光が反射してるんだな?)
と思って少し安心した。しかし、しばらく見ているとその小さな光2つが、ゆっくりと稲川さんの方を見るように角度を変えてきたのだ。
(そんなはずって…ないんだよね…。)
この時の様子を、稲川さんは思い出すとゾッとするという。それもそうである。もしメガネに光が反射しているのであれば、角度を変えた瞬間光を反射させている「光源」からメガネまで光が届かなくなり、消えるはずだからだ。しかしこの時点では稲川さんは気が付かなかった。舞台監督さんの声が聞こえて来たからだ。
「稲川さん、こちらです。稲川さんこちらです」
小さな声で誘導してくれる。
舞台が暗転、つまり真っ暗闇のうちに稲川さんは舞台に上がり、所定の場所まで歩いていく。だが暗くて足元が見えないために舞台監督さんが誘導してくれるのだ。舞台の真中辺りに稲川さんが差し掛かった時である。稲川さんはハッ!とした。少年人形、少女人形の黒子さん6人は自分のすぐ間近に居る。舞台監督さんはホリゾントの後ろ、つまり小さな光が2つある場所とはまったく違う、舞台の反対側の袖に居るのだ。+0
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