今思えばツッコミたくなる漫画

[365. 匿名]

私がツッコミたくなるのは、作者の特定キャラへのひいきがすご過ぎて、不自然な展開を感じさせてしまったり、不自然にそのキャラばかり出番が多くて、ゴリ押し感を感じさせてしまう作品全般。そのために、せっかくの傑作のはずが、どこか残念になってしまう作品も多い。何でこの悪役キャラが、最後まで成敗されないまま？とか。
それで昔のレディースコミックスになってしまうけどいい？
私がそうした代表的な理不尽さを感じたのは、佐伯かよのの「緋の稜線」。
それまであくまで主人公の瞳子は、新之助なんて単なる幼馴染みとしか思っていなかったのに、もうとっくに人妻になった彼女を彼がレイプして妊娠までさせてしまって、更に新之助や子供が哀れだとでも思ったのか、誰からも望まれない子なのがわかっているのに、結局瞳子もその子を出産してしまうし。
その上、よりにもよってその息子が歴史ある老舗の菱屋の跡継ぎになってしまうという、あり得ないこと尽くし。それに昇吾と瞳子夫婦の間に、この健吾しか子供がいなかったかとかいうのならまだしも、れっきとした昇吾と瞳子との息子の次男もいたのに。
それは昇吾だって妻の瞳子を愛しているからこそ、彼女と離婚することには苦悩するだろうけど、普通他の男にレイプされて更にその子を産もうなんて考える妻がいたら、特にあの時代なら、涙を飲んで離婚すると思うわ。
特に男の子なら、後継者問題にも大きく関わってくるしね。
それにこの健吾が実父の新之助に似ていなくて、母親の瞳子似という設定も、都合が良過ぎるなと思ったし。



もしくは瞳子が子供を中絶して夫との結婚を継続するか、離婚して出産とか。
いくら新之助が病気で先が長くないからって、新之助の瞳子にしたことが正当化されるかのような一連の展開は、おかし過ぎると思う。
もう新之助にしては、いいこと尽くめだし。
ずっと好きだった瞳子と関係を持つことはできるし、息子は産んでもらえるし、更にその息子を本来自分とは何の関係もない、菱屋の後継者にまでしてもらえちゃうんだから。
それに昇吾が後で、芸者の芙美香に恋してしまって萌をもうけ、芙美香の死後は瞳子が彼女を引き取るという展開も、かつて他の男にレイプされて、更にこの男との子供も出産して夫の子として育てる、いわば瞳子のわがままを、これでおあいこにさせようとする作者の意図が、明らかに見て取れて嫌だなと思った。こうして愛人の娘を引き取ることで、これで瞳子のよくできた妻アピールにもなるしね。


あまりにも不自然な感じの、この作者の新之助の優遇振り、そして昇吾がいろいろと大変過ぎると思っていたら、他の作品の文庫版で実は作者がこの新之助の方が好きで、昇吾の方はそれ程好きではなかったことが書かれていて納得。
それを考えると、特定のキャラをやたらとひいきして優遇したりしないで、全てのキャラを距離を持って描ける作者って、すごいと思う。
それからこの「緋の稜線」の主人公の瞳子はずっと読者人気が高くて、昇吾の浮気の方ばかり批判される傾向みたいだけど。
でも、レイプされてしまったのまでは、しかたないにしても、夫以外の男の子供を出産して、しかも夫の子として育て、ひいては菱屋の跡継ぎにまでさせてしまう、この瞳子だってどうかと思うけど。夫の昇吾の優しさに甘え過ぎ。
この瞳子の決断は全然理解できないし、共感もできない。この無理のあり過ぎる一連の決断で、私は主人公の瞳子に、引いたな。
それに瞳子が大阪のある社長みたいな男性に好意を持たれて迫られても、彼女には拒否させていて、瞳子ばかりいい子にしようとし過ぎている感じで不快。